3月初めからユダヤ人の家族と交流するようになった。
夫はアメリカ系、妻はロシア系、私の長女と同い年の娘が一人。
きっかけは、いきつけのインド料理屋さんで、たまたま同じタイミングで、家族の会食をしていたときに、オーナーがロシア語が共通していることに気を回して、つなげてくれたこと。
コロナウイルス禍により、居住国(パリ)へ戻ることが叶わず、当初予定していた期間より長く日本に滞在せざるを得ない状況にあるため、「これで最後」と言いながら、都合、毎週のように顔を合わせていた。
最終的には、GWで沖縄へ向かい、そのままパリに帰国した。
約2ヶ月の関わりであったが、家族ぐるみで交流することができ、大変刺激をいただいた。
僕にとっても、妻にとっても、初めて接するユダヤ人だった。
ご主人はニューヨーク出身で紛争調停を専門とする国際弁護士、ご夫人はモスクワ出身で東欧・ロシア文学を専門とする大学教授で、現在はパリを拠点にされている。アメリカ・ロシア・フランスの3カ国の国籍を持つご息女はこちらの長女と同い年だ。
僕は何を話せば良いか、自分の何を表現すればいいか、判らぬまま関わっているが、妻はロシア語で関心の高い分野について意見交換ができるため、出会うたびに顔を輝かせている。
またご夫妻は知性もステータスも高くありながら、こちらを軽視することなく、特に妻に対しては大変親身に関わり、交流を深めてくれた方々だ。
昨年末から、ご夫人が大学のプログラムに参加することに合わせて、3ヶ月の長期休暇をとり、日本に滞在していて、出会ったときは、コロナウイルスが世界的なロックダウンを引き起こす直前(ご夫人のプログラムが終了する直前でもあった)だった。
僕が何よりも嬉しかったのは長女に同年代の友人ができたことだった。
日本で生まれ育ちながら、ロシア語が母語として育っている長女にとって、日本人の友人を作ることは難しかった。
それが、アナと雪の女王という共通のコンテンツは介したものの、偶然鉢合わせた旅客者であるユダヤ人の子女と仲良くなるのだから、人生がもたらしたこの機会に感謝せざるを得ない。
言語・知性・感性・表現力といった全人的なエネルギーの交流を通じて、長女が成長してくれればと思ったが、果たしてそうなった。
ご夫妻とは様々なジャンルの話ができた。フランスにおける移民問題やご息女の国籍などについてご主人と妻が会話していた(もちろんロシア語)。ご主人は僕に気を使って二人になった時に英語で、僕の仕事の話やBBCでみたチンパンジー学者の話をしてくれた。
また歴史の話になったときに、日本でのユダヤ人論について、把握している知識を共有すると、非常に興味を持たれた。日本におけるユダヤ人論は、むしろこの島国だけの情報なのかもしれない。当のユダヤ人にとっては、新鮮だが不思議な言説なのかもしれない。
ご夫婦に対し、自分が抱いている親としての劣等感や不安について吐露し、アドバイスを求めたことがあった。ご夫婦は、それぞれが今のキャリアに向かってきた過程について話しながら、「朝起きて、『今日も一日楽しいぞ』と思える日々を送る」「自分が学びたい、やりたいと思ったことを仕事にする」というアドバイスをくれた。日本での日常生活で流れるキャリア言説は、ともすれば一部の人間の成功譚やスキルアップに傾倒しがちであるが、人生の本質は、万国共通で、そうした当たり前のことを自分の深いところで肚落ちできているかどうかは、とても重要だと思う。
日本に住みながら、子ども達にグローバルな環境をどのように提供していくかは、僕の人生のテーマの一つだ。インターナショナルスクールに通わせる、というのも選択肢だが、子どもの教育において親の主体的な関わり方が本質だと思っている。お金を払って環境を用意するのではなく、親が率先的に動いて、望む環境を構築していくことが、子どもに新しい知見や勇気をもたらし、自立した行動を促すことにつながるのではないだろうか。
ユダヤ人のご夫婦の出会いは、その契機になるのだと思っている。
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